マインドフルネス瞑想の呼吸法は、呼吸を無理に変えるのではなく、今している自然な呼吸に気づき、意識がそれたら静かに戻すことが基本です。
深く吸おうと頑張る必要はありません。浅い呼吸の日があっても、「今はこう呼吸しているんだな」とそのまま感じるところから始められます。
マインドフルネス瞑想の呼吸法とは?
マインドフルネス瞑想の呼吸法とは、「今、この瞬間」に起きている呼吸を観察しながら、現在の身体感覚へ注意を戻していく練習です。
マインドフルネスは、「今、ここ」の現実に意識を向け、自分が感じていることに客観的に気づいている状態として説明されます。
私たちの頭の中には、何もしなくても過去の出来事やこれからの予定、人間関係への心配などが次々と浮かんできます。
「あのとき、こう言えばよかった」「明日の仕事は大丈夫かな」と考え続けているうちに、気づけば目の前の時間より頭の中の世界に長く滞在していることもありますよね。
そこで手がかりになるのが呼吸です。
呼吸はいつも「今」起きています。昨日の呼吸を今することも、明日の呼吸を先にすることもできません。
だからこそ、呼吸を感じることは、過去や未来へ向かいやすい注意を現在へ戻すための分かりやすい入口になります。
呼吸は「コントロールする対象」ではなく「観察する対象」
マインドフルネス瞑想というと、「ゆっくり深呼吸をしなければならない」と思う方もいるかもしれません。
けれど、基本となる呼吸瞑想では、必ずしも呼吸を深くする必要はありません。
浅ければ浅いまま、速ければ速いまま、「息が入っている」「出ている」「お腹が少し動いた」と観察していきます。
自分が気持ちいいと感じる呼吸でよく、浅くても深くても構いません。
これはとても大切なポイントです。
心身を休ませたいときほど、「正しく呼吸しなきゃ」と力が入ってしまうことがあります。しかし、マインドフルネスでは、その頑張りそのものにも気づいていきます。
「深く吸えない私はダメ」と評価するのではなく、「今、深く吸おうとして力が入っているな」と分かることも、十分に練習の一部なのですね。
マインドフルネス瞑想では、なぜ呼吸に意識を向けるの?
呼吸に意識を向ける理由は、いつでもそこにある身体感覚を目印にして、思考から現在の体へ注意を戻しやすくするためです。
私たちは、普段ほとんど無意識のうちに呼吸しています。
今この文章を読むまで、「吸った」「吐いた」と毎回確認していた方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
その無意識に続いている呼吸を、あえて観察します。
鼻を通る空気の感覚、お腹や胸がわずかに動く感覚、息を吐いたあとに次の息が自然に入ってくる様子など、頭ではなく体で分かる情報へ注意を向けます。
すると、考えることを完全にやめなくても、「考えだけの世界」から「今ここにある身体」へ戻るきっかけを作れます。
雑念が出るのは失敗ではない
実際にやってみると、おそらく数十秒もしないうちに別のことを考えるでしょう。
「晩ごはん、何にしよう」
「そういえば返信していないメールがあった」
「ちゃんと瞑想できているのかな」
そんな考えが次々に浮かんでも問題ありません。
マインドフルネス瞑想では、雑念を完全に消すことより、雑念に気づき、再び呼吸へ注意を戻すことが大切です。
特に、初心者の方はこの視点を持っておくと、少し楽になると思います。
「5分間ずっと集中できたら成功」ではなく、むしろ「それたことに気づいて10回戻れた」なら、その10回すべてが練習なのです。
私は、この捉え方がマインドフルネスを続けるうえでとても大事だと考えています。
うまく集中できない日は失敗の日ではありません。「気づいて戻る」を何度も経験できた日とも言えるからです。

マインドフルネス瞑想の呼吸法、基本のやり方は?
初心者が始めるなら、楽な姿勢を取り、自然な呼吸を観察し、注意がそれたら呼吸に戻るというシンプルな方法で十分です。
特別な道具も、難しい技術も必要ありません。
基本の流れは次の通りです。
- 椅子などに楽に座る
- 背筋を無理のない範囲で軽く伸ばす
- 目を軽く閉じるか、前方の床をぼんやり見る
- 1〜2回ゆったり呼吸したあと、自然な呼吸に任せる
- 鼻を通る空気や胸・お腹の動きを感じる
- 考えや感情が浮かんだら「それた」と気づく
- 良し悪しを決めず、また呼吸へ注意を戻す
- まずは2〜5分ほど続ける
一つずつ、もう少し詳しく見ていきましょう。
1.楽な姿勢をつくる
椅子に座る場合は、両足を床につき、背筋を軽く伸ばします。
「良い姿勢にしなければ」と胸を張りすぎる必要はありません。頭のてっぺんが少し上へ伸びるような感覚で、呼吸を邪魔しない姿勢を探してみてください。
手は膝や太ももの上へ自然に置けば十分です。
目は閉じてもかまいませんが、眠くなりやすい方は、数メートル先の床を見るような半眼でもできます。
2.最初だけ1〜2回、少し大きく呼吸する
始めに1〜2回、ゆったりと息を吸って吐きます。
ここは「できるだけたくさん空気を入れなければ」と頑張らなくて大丈夫です。
準備ができたら、呼吸を操作するのをやめて、普段の呼吸へ戻します。
3.自然な呼吸を観察する
鼻から空気が入る感覚、出ていく感覚に意識を向けます。
鼻の感覚が分かりにくければ、胸やお腹が「ふくらむ・しぼむ」ところを感じてもかまいません。
「吸っている」
「吐いている」
と心の中で短く確認してもよいでしょう。
鼻呼吸が楽なら鼻から吸って鼻から吐きますが、鼻づまりなどで苦しい場合まで無理に鼻呼吸へこだわる必要はありません。
大切なのは呼吸の形式ではなく、今起きている呼吸を苦しくない範囲で感じることです。
4.雑念に気づいたら戻る
しばらくすると、ほぼ必ず何かを考えます。
そのとき、「集中できなかった」とがっかりしなくて大丈夫です。
「あ、仕事のことを考えていた」
「昔の出来事を思い出していた」
と気づいたら、そのまま呼吸へ戻ります。
感情も同じです。
不安、焦り、退屈、イライラなどが出てきても、「こんな気持ちはなくさなければ」と追い払おうとせず、「不安があるな」と気づいて、また呼吸を感じます。
この繰り返しが、マインドフルネス瞑想の中心です。
呼吸が浅い・苦しいときはどうすればいい?
呼吸が浅かったり苦しく感じたりするときは、無理に大きく吸おうとせず、いったん呼吸をコントロールするのをやめることが大切です。
「深く呼吸しなければ」と頑張るほど、胸や肩に力が入り、かえって息がしづらくなることがあります。
深く吸うことより、吐く息をそっと見守る
自然な呼吸が難しいときには、「どこまで吐けるかな」と吐く息の終わりへ静かに意識を向ける方法があります。
ただし、限界まで強く吐き切る必要はありません。
細く、ゆっくり、苦しくないところまで吐いてみます。
息を吐いたあと、多くの場合は体が次の吸気を自然に始めます。
ここで大切なのは、「私が吸わなくちゃ」ではなく、体が次の呼吸を始める様子を感じてみることです。
呼吸を主導するというより、体が呼吸するのを少し横から見守るようなイメージですね。
秒数を決めた呼吸法は無理に使わなくていい
瞑想の呼吸法には、4秒吸う、7秒止める、8秒吐く「4・7・8呼吸法」や、4秒ずつ吸う・止める・吐く・止める「ボックスブリージング」なども知られています。
また、呼吸を1から10まで数える数息観や、左右の鼻を交互に使う片鼻呼吸法もあります。
ただ、これらはマインドフルネス呼吸瞑想の必須条件ではありません。
特に、息を止めることや秒数を合わせることが苦しい方は、無理に行う必要はありません。
マインドフルネス瞑想の基本は、呼吸を理想の形へ変えることではなく、「今の呼吸に気づくこと」です。
ここを混同しないことが重要だと私は考えています。
「腹式呼吸ができないからマインドフルネスは無理」「長く吐けないから失敗」と思う必要はありません。
本当の息苦しさを瞑想だけで片づけない
一方で、呼吸法をしていないときにも強い息苦しさが続く、胸の痛み、強い動悸、めまい、失神しそうな感覚などがある場合は、単なる瞑想中の違和感と決めつけないことも大切です。
呼吸の苦しさにはさまざまな原因があります。
心身のセルフケアとして瞑想を使うことと、体調不良を医療的に確認することは別です。症状が強い場合や繰り返す場合は、必要に応じて医療機関へ相談してください。
これは「うまく瞑想できない」という問題ではありません。
体から届いているサインを無理に押し込めないことも、自分の状態を丁寧に扱うという意味ではマインドフルな態度だと思います。
マインドフルネス瞑想中に眠くなるのはなぜ?
瞑想中の眠気は珍しいことではなく、目を閉じたことで脳が睡眠モードへ入りやすくなったり、単純に疲労や睡眠不足が表面化したりすることがあります。
眠くなったからといって、「瞑想が向いていない」と考えなくて大丈夫です。
まずは眠気そのものを観察してみましょう。
まぶたが重い。
頭がぼんやりする。
体が温かくなってきた。
そんな変化に「良い」「悪い」と判断を付けず、気づいたら呼吸へ戻ります。
それでも眠いときに考えられる2つの理由
一つは、「目を閉じる=眠る」という習慣です。
普段、私たちは寝る直前に目を閉じます。そのため、瞑想に慣れていない段階では、目を閉じただけで自然に眠気が出ることがあります。
もう一つは、精神的・肉体的な疲労や睡眠不足です。
この場合は、瞑想で眠気を克服するより、まず休息を確保したほうがよいこともあります。
寝てしまった自分を責める必要はありません。
むしろ、「こんなに疲れていたんだ」と気づけたこと自体が、自分の状態を知るきっかけになります。
眠気が強いときの3つの工夫
眠気対策としては、次の3つが取り入れやすいでしょう。
- 就寝直前や食後を避ける
- 毎日短時間でも続けて慣れる
- 2〜3分から始め、5分、10分と少しずつ延ばす
朝起きたあとや、まだ眠るには早い夕方などに試してみる方法もあります。
目を閉じるとすぐ眠ってしまう方は、半眼で行ってみてもよいですね。
マインドフルネス瞑想は何分やればいい?
初心者は、まず2〜5分程度から始め、無理なく続けられる範囲で少しずつ延ばしていけば十分です。
最初から10分、20分と頑張ろうとすると、「今日もやらなければ」という新しい負担になってしまうことがあります。
呼吸瞑想では、2〜3分から始め、慣れてきたら5分、10分、20分へ延ばしていくという方法もあります。
一方、1日5分を2回、まず2か月続けてみるという方法もあります。
どちらかが絶対に正しいというより、重要なのは続けられる長さを選ぶことです。
例えば、次のように考えてみると始めやすいでしょう。
「朝の歯磨きが終わったら2分」
「仕事を始める前に3分」
「夕食後では眠くなるから、夕方に5分」
毎日すでにしている行動と結びつけると、習慣にしやすくなります。
「長くできた日」より「戻れた日」を大事にする
ここで一つ、私は時間とは別の物差しも持っておくとよいと考えています。
それは、何分できたかではなく、何度自分の状態に気づけたかです。
10分座っていても、ずっと「ちゃんとやらなくちゃ」と自分を責めていたなら、疲れてしまうかもしれません。
逆に2分しかできなくても、
「肩に力が入っていた」
「仕事のことを考えていた」
「息を深くしようと無理していた」
と気づき、そのたびに自然な呼吸へ戻れたなら、十分意味のある時間でしょう。
マインドフルネスは、心を真っ白にする競技ではありません。
気づいて、戻る。
またそれて、また気づく。
この小さな往復を重ねることが、基本の練習です。
呼吸に集中できないときはどうする?
呼吸に集中できないときは、集中を無理に固定するより、「逸れたことに気づく練習をしている」と考えてみてください。
人の注意はずっと一つの対象に留まり続けるものではありません。
外から音が聞こえればそちらへ向きますし、心配事があれば自然に考え始めます。
それを力ずくで止めようとすると、今度は「考えてはいけない」という考えにとらわれます。
音が聞こえたら、いったん音に気づいていい
例えば、外で車の音がしたとします。
「邪魔だな」
「静かな場所じゃないとできない」
と反応したことに気づいたら、一度その音をそのまま聞いてみます。
「車の音が聞こえている」
そして、また呼吸へ戻ります。
鳥の声や風、水の音、子どもの声なども同様です。無理に外から聞こえてくる音を排除せず、周囲の観察と呼吸への注意を行き来きしてみましょう。
静寂がなければマインドフルネスができないわけではありません。
日常の音や感覚の中で、「あ、今こちらへ注意が動いた」と分かり、戻ることも練習になります。
数を数える方法も使える
どうしても呼吸だけでは注意が散りやすいなら、数息観のように数を使う方法もあります。
例えば、
吸うときに「1」
吐くときに「2」
次の吸う息で「3」
というように数え、10までいったら1へ戻ります。
途中で分からなくなったら、それも失敗ではありません。
「分からなくなった」と気づいたところから、また1へ戻ります。
ただし、数を間違えないことが目的になって苦しくなるなら、数えるのをやめても大丈夫です。
自分にとって呼吸へ戻りやすい手がかりを使うくらいの柔軟さで十分です。
マインドフルネス瞑想の呼吸法で大切なのは「上手に呼吸すること」ではない
ここまで見てきた中で、私が最も大切だと考えているのは、マインドフルネス瞑想を「呼吸を上手にする練習」にしないことです。
呼吸法という名前を見ると、どうしても「正しい吸い方」「正しい吐き方」を探したくなります。
腹式呼吸、4・7・8呼吸法、数息観、片鼻呼吸法、ボックスブリージングなど、呼吸を使う方法はたくさんあります。
もちろん、それぞれが自分に合えば取り入れる選択肢になります。
けれど、マインドフルネス瞑想の基本に立ち返ると、中心にあるのは「呼吸を変えること」より「呼吸に気づくこと」です。
浅い呼吸に気づく。
深い呼吸に気づく。
息が入りにくいと感じている自分に気づく。
「もっと上手にやらなきゃ」と焦っている心にも気づく。
そして、必要以上に評価せず、また今の呼吸へ戻ってきます。
この違いは、似ているようで大きいものです。
「呼吸を整えれば心も必ず整う」と決めつけない
呼吸は、今の身体感覚へ戻るためのとても身近な手がかりです。
ただ、呼吸だけですべての不安やストレスが解決するわけではありません。
強い疲労があるなら休息が必要ですし、眠れていないなら睡眠を確保することも重要です。
日常生活に支障が出るほどの不安や気分の落ち込み、繰り返す強い息苦しさなどがある場合には、セルフケアだけで抱え込まないことも選択肢になります。
私は、マインドフルネスを「つらさをなくすために自分を操作する方法」ではなく、今の自分に何が起きているのかを知るための静かな時間として捉えるほうが、長く付き合いやすいと感じています。
調子がいい日の呼吸も、疲れている日の呼吸も、その日のあなたの一部です。
「今日は浅いな」と気づくだけの日があってもいい。
「全然集中できなかった」と感じる日があってもいい。
それでも、ほんの数秒でも呼吸へ戻れたなら、「今ここ」に触れる時間は確かに生まれています。
まとめ
マインドフルネス瞑想の呼吸法は、深く呼吸することや、決められた秒数どおりに呼吸することが基本ではありません。
自然な呼吸を感じ、考えや感情に注意がそれたことに気づいたら、評価せずに呼吸へ戻すことが中心です。
姿勢は無理のない形で整え、鼻やお腹、胸など自分が分かりやすい場所で呼吸を感じてみましょう。
呼吸が浅い日は無理に深くしなくて大丈夫です。自然に呼吸するのが難しいときは、ゆっくりとした吐く息を感じ、そのあと体が自然に吸い始める様子を見守る方法もあります。
時間は最初から長く取らなくても構いません。
2〜3分から始め、慣れたら5分、10分へと少しずつ延ばしていけば十分です。眠くなりやすければ、就寝前や食後を避けたり、目を完全に閉じずに行ったりする方法もあります。
そして何より、「雑念が出たら失敗」ではありません。
それたことに気づいて戻る瞬間こそが、マインドフルネス瞑想の練習そのものです。
毎日がんばっていると、私たちはつい頭の中の予定や心配ばかり追いかけてしまいます。
そんなとき、たった数分でも「今、息をしている」と体へ戻る時間を持つことは、自分の状態を静かに確かめる小さな居場所になってくれるでしょう。
よくある質問
マインドフルネス瞑想では深呼吸をしないといけませんか?
いいえ。基本は、無理に深く吸うのではなく、今している自然な呼吸を観察することです。
浅い呼吸でも構いません。「浅いな」と気づき、その感覚をそのまま感じてみましょう。
マインドフルネス瞑想は何分から始めればいいですか?
初心者なら2〜5分程度からでも十分です。
慣れてきたら5分、10分と延ばしていき、長さよりも無理なく続けられることを大切にしましょう。
瞑想中に雑念ばかり浮かぶのは失敗ですか?
失敗ではありません。
考えごとをしていたことに気づき、再び呼吸へ注意を戻す。その繰り返し自体がマインドフルネス瞑想の基本的な練習です。
結城紬(心と体のケアアドバイザー)


コメント