外出中や電車の中でも、呼吸・姿勢・視線・足裏への意識を少し変えることで、心身を休ませる時間はつくれます。
特に通勤電車では、「なんとか気分を変えよう」と刺激を足すより、スマートフォンから目を離し、吐く息や体の感覚に意識を戻すほうが取り入れやすいでしょう。無理に落ち着こうとせず、今ある緊張に気づくところから始めてみてくださいね。
外出中にリラックスする方法は?まず「刺激を減らす」ことから
外出中にリラックスしたいときは、何かを新しく足すより、まず目や耳から入る刺激を少し減らすのがおすすめです。
外出していると、自宅にいるとき以上にさまざまな刺激が入ってきます。
人の話し声、電車のアナウンス、車の音、スマートフォンの通知、店の照明、人混みの動き。自分では何もしていないつもりでも、頭はこうした情報を次々に受け取っています。
通勤中も、アナウンス、人の動き、車内の振動、スマートフォンの光など、五感には絶えず情報が入ります。
仕事や人間関係ですでに疲れている日は、こうした刺激がいつも以上に重たく感じられることもあるでしょう。
だからこそ、外でリラックスしたいときは、何か特別なリラックス法を増やす前に、入ってくる情報を一度減らすという発想を持ってみてください。
たとえば、電車に乗ったらすぐスマートフォンを開くのではなく、最初の1分だけ画面を見ない。イヤホンから音を流し続けているなら、数分だけ無音にする。
SNSを開く代わりに、窓の外を見る。次の動画を再生する前に、一度だけゆっくり息を吐いてみる。
それだけでも、「外から入ってくるもの」に向き続けていた意識を、自分の体へ戻しやすくなります。
また、お金をかけずにできるリフレッシュ法として、散歩やウォーキング、図書館、美術館、呼吸を整える方法などがあります。
なかでも呼吸は、場所や道具をほとんど必要としません。外出中や移動中との相性がよい方法の一つといえるでしょう。
厚生労働省の「こころの耳」でも、呼吸法は手軽に取り入れられるリラクセーションの方法として紹介されています。ストレスを感じているときには呼吸が浅く速くなりやすく、ゆったりとした呼吸を意識することが心身を落ち着ける方法の一つとされています。
ただし、「大きく吸わなければ」と頑張る必要はありません。
緊張しているときほど、息を吸おうとすると胸や肩まで力んでしまうことがあります。そんなときは、吸うことよりも静かに吐くことから意識してみてください。
厚生労働省のセルフケア情報でも、腹式呼吸ではまずゆっくり息を吐くところから始める方法が紹介されています。
私はサロンで心身の悩みを聞いてきた中でも、「リラックスしようとして、かえって頑張ってしまう」という方を何度も見てきました。
「深く呼吸しなくては」「姿勢を正しくしなくては」「気持ちを切り替えなくては」と考えるほど、セルフケアが新しい仕事になってしまうことがあるのですね。
リラックスとは、新しい仕事を自分に課すことではありません。むしろ、ひとつ余計なものを手放すことに近いのだと思います。
外にいるときこそ、「何をしようか」ではなく「何を少し減らせるだろう」と考えてみる。
スマートフォンを見ない、音を止める、肩の力を少しゆるめる。それだけで、休み方がやさしくなりますね。
電車でリラックスする方法は?呼吸を数えるだけでもいい
電車では、呼吸を1から10まで静かに数え、考え事に気づいたらまた呼吸へ戻る方法なら、人目を気にせず取り入れやすいでしょう。
電車の中で実践しやすい方法として、参考になるのがマインドフルネスの考え方です。
マインドフルネスでは、何も考えない状態を目指す必要はありません。呼吸など、今の感覚へ注意を向け、別のことを考えている自分に気づいたら再び戻ってくることが基本になります。
立っている場合は、まずつり革や手すりにつかまって体を安定させ、目を閉じ切らず、周囲を確認できる状態を保ちます。
そのうえで、「吐いて、吸って」で1回として数え、10まで数えたら再び1に戻る方法があります。
ポイントは、呼吸以外のことを考えてしまっても失敗だと思わないこと。
「スマートフォンを見たい」「隣の人が気になる」「会社に着いたら何をしよう」「さっきの会話が気になる」と考えている自分に気づいたら、また呼吸へ意識を戻します。
この「それたことに気づいて戻る」という小さな繰り返しが大切なのですね。
米国のNCCIH(国立補完統合衛生センター)も、マインドフルネスや瞑想について研究が行われている一方、効果の大きさや研究の質には幅があるとしています。万能な方法と考えるのではなく、自分に合うセルフケアの一つとして取り入れるのがよいでしょう。
初心者なら、まず3分程度からでも構いません。
時間の長さより、「またやってみよう」と思える軽さのほうが続けやすいからです。
さらに、「3つ先の駅まで」「次の駅に着くまで」のように区切りを決めるのも実践しやすくなるコツです。
「今日から毎朝20分瞑想しよう」と決めると、それだけで少し重たくなってしまう方もいるでしょう。
それよりも、「次の駅まで呼吸を数えてみよう」くらいで十分です。
外で行うセルフケアでは、完璧さよりも人目を気にせず、自然にできることのほうが続きやすいと私は感じています。
そして、数え方も絶対ではありません。
10まで数えると焦ってしまうなら5まででも構いませんし、数えること自体が落ち着かないなら、「吐いている」「吸っている」と感じるだけでも大丈夫です。
ただし、混雑している電車では安全が最優先です。
立っている場合に完全に目を閉じたり、呼吸へ意識を集中しすぎたりせず、電車の揺れや周囲の乗客、乗り降りの動きが分かる状態を保つようにしてください。
リラックスすることより、安全に立っていることのほうが大切です。

電車で息苦しいときは「深く吸う」より力を抜く
電車で息苦しく感じるときは、無理に大きく吸おうとせず、肩・あご・お腹などの力みに気づき、苦しくない範囲でゆっくり吐いてみましょう。
電車で落ち着こうとしているのに、なぜか呼吸がしづらい。
そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。
満員電車では、人との距離が近いうえに姿勢を自由に変えにくく、肩や首へ力が入りやすくなります。
また、圧迫感や自由に動けない姿勢、閉塞感、遅延への焦り、周囲への気遣いなど、身体的・精神的な負担が重なりやすい場所でもあります。
不安が強くなると、動悸、発汗、震え、息苦しさなどの身体症状が現れることがあります。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、不安に伴って呼吸困難や動悸などが生じる場合があると説明されています。
このような場面では、「深呼吸しなければ」と無理に大きく吸う必要はありません。
むしろ、肩を少し下げる。
奥歯を噛みしめていたら、少しゆるめる。
舌を上あごへ強く押しつけていたなら、ふっと力を抜く。
お腹を固めていたことに気づいたら、ほんの少しゆるめる。
そして、息を吐く。
これくらいから始めるほうが自然です。
息を吐く時間を少し丁寧に感じることも、呼吸を整える一つの方法です。
ただし、「最後まで吐く」という言葉を、苦しくなるほど吐き切るという意味には捉えないでくださいね。
息を止めたり、苦しさを我慢したりする必要はありません。
呼吸は本来、体が自動的に続けてくれているものです。
大切なのは、コントロールし尽くすことではなく、「あ、今ずいぶん息を止めていたな」「肩が上がっているな」と自分に気づくことです。
私はここに、外出中のリラックスでとても大切な視点があると考えています。
落ち着くために呼吸を完璧に変えるのではなく、呼吸に気づくことで、自分がどれだけ頑張っていたのかを知る。
その瞬間、体に「もう少し力を抜いてもいい」と伝えられます。
たとえば電車の中なら、背中側にも呼吸が広がっていくような感覚を思い浮かべてみるのもよいでしょう。
胸だけを大きく膨らませようとすると肩に力が入りやすい方は、背中や腰まわりが静かに広がるようなイメージを持つと、「頑張って呼吸しなくては」という意識から離れやすくなることがあります。
これは特定の呼吸効果を保証するものではなく、あくまで体の力みに気づくためのイメージとして使ってくださいね。
息苦しさがあるときに無理をしない目安
一方で、息苦しさをすべて「緊張のせい」と決めつけるのは避ける必要があります。
息苦しさにはさまざまな原因があり、胸の痛みなどを伴う場合には緊急性のある病気が隠れていることもあります。
特に次のような状態が強いときは、リラックス法を続けることより、安全を確保することを優先してください。
- 強い、または突然の息苦しさがある
- 胸に強い痛みや圧迫感がある
- めまいや失神しそうな感覚がある
- 冷や汗や強い吐き気を伴う
- 意識が遠のくように感じる
- いつもと明らかに違う症状がある
可能であれば次の駅で降りるなどして安全な場所へ移動し、症状に応じて駅員や周囲の人へ助けを求めたり、医療機関へ相談したりしてください。
リラックス法は、不調を我慢して電車に乗り続けるための方法ではありませんからね。
外を歩きながらリラックスするなら、歩くリズムを利用する
歩いているときは、呼吸を無理に整えるより、足裏が地面に触れる感覚や風、景色など「今ここ」にある感覚へ注意を戻すと取り入れやすくなります。
電車だけでなく、駅まで歩く時間や買い物の途中も、心身を整える時間に変えられます。
散歩やウォーキングは屋外で取り入れやすいリフレッシュ法の一つです。
公園などを歩けば自然の景色に触れられ、普段とは違うものを見ることで気分転換にもなります。
「2歩で吸い、3〜4歩で吐く」など、歩くリズムに呼吸を合わせる方法もあります。
ただ、この数字に合わせること自体が目的ではありません。
歩幅や体力、坂道か平地か、その日の体調によって、心地よい呼吸の長さは変わります。
「今日は2歩で吸うと苦しいな」と思えば、もっと自由で構いません。
呼吸を数えることが負担なら、数えなくても大丈夫です。
私なら、まず歩きながら「足が地面に触れる感覚」を感じるところからおすすめします。
右足が着いた。
次に左足が着いた。
靴底に少し硬さを感じる。
風が頬に触れる。
腕が歩くたびに自然に揺れている。
そんな、ごく普通の感覚です。
不安や考え事が続いているとき、私たちの意識は頭の中の「まだ起きていないこと」や「もう終わったこと」へ向かいがちです。
「あのとき違う言い方をすればよかった」「明日の仕事は大丈夫かな」と、体は歩いているのに、意識だけが過去や未来へ出かけてしまうこともありますよね。
一方、足裏が地面に触れている感覚は「今ここ」にあります。
歩く瞑想のように本格的な方法を実践しなくても、数歩だけ足裏を感じることで、思考から体へ注意を戻すきっかけはつくれます。
さらに、少し余裕がある場所では景色を見るのもおすすめです。
リフレッシュというと、どこかへ遊びに行ったり、何かを買ったりしなければならないように感じることがあります。
けれど、視線をスマートフォンから離して遠くへ移すだけでも、いつもの情報の流れを一度中断できます。
駅を出たとき、信号待ちをしているとき、建物の窓から空が見えたとき。
スマートフォンではなく、ほんの10秒だけ遠くを見てみる。
雲が動いている。
木の葉が揺れている。
夕方の空の色が少し変わっている。
そんなことに気づくだけでも構いません。
それも十分、「外でリラックスする方法」のひとつです。
ただし、歩行中は安全が最優先です。呼吸や足裏へ意識を向けすぎず、信号、自転車、自動車、周囲の歩行者を確認できる状態で行ってくださいね。
人混みや満員電車で疲れるなら、体の「支え方」を変えてみる
満員電車で体が疲れやすい人は、上半身を無理に脱力させるより、まず足裏や座面など「体を支えている場所」に気づいてみましょう。
外出中の疲れは、気持ちだけの問題ではありません。
特に混雑した車内では、電車が揺れるたびに倒れないよう無意識に体を固めています。
肩を上げ、首を縮め、歯を食いしばり、腕や背中を緊張させる。
こうした小さな力みが何十分も続けば、降りる頃にはぐったりしても不思議ではありません。
電車の中で立っていて疲れてしまう人は、親指の付け根、小指の付け根、かかとの3点を目安に、足裏全体で床に立っている感覚を確かめてみる方法があります。
これは「3点で立てば疲労が解消する」という意味ではありません。
大切なのは、足裏のどこへ体重をかけているのかに気づくことです。
この方法のよいところは、「上半身をリラックスさせよう」と直接頑張らなくてよい点にあります。
足元や手すりなど、自分を支えてくれている場所へ注意を向けると、「全部の筋肉で必死に立っていなければ」という感覚が少しゆるむことがあります。
混雑していて足を自由に動かせない場面では、無理に姿勢を変える必要はありません。
安全に立てる状況なら、「今、かかとだけに体重が乗っていないかな」「右足だけで支えていないかな」と足裏を感じてみてください。
そして、つり革や手すりも使いましょう。
セルフケアのために「自力だけできれいに立つ」必要はありません。使える支えは使ってよいのです。
座っている場合も同じです。
背筋を軍隊のように真っすぐ伸ばす必要はありません。
骨盤の上に上半身が自然に乗っている感覚を探し、肩を少し落とします。
背もたれを使える状況なら、適度に預けても構いません。
ここで覚えておきたいのは、「良い姿勢=力を入れ続ける姿勢」ではないということです。
姿勢を整えようとして胸を張り続けると、それ自体が疲れにつながることがあります。
私が大切にしたいのは、体を自分で必死に持ち上げるのではなく、骨格や床、座席、つり革といった「支えてくれるもの」に少し預けるような感覚です。
頭や肩を背骨の上にそっと乗せる。
座っているなら、座面に体重を預ける。
立っているなら、足裏に体重を預ける。
すると、「自分が全部支えなくては」という力みから少し離れやすくなります。
これは派手な方法ではありませんが、毎日の通勤で繰り返すには、とても実用的だと私は考えています。
外で落ち着くためには、心を直接どうにかしようとするだけでなく、「体は今どこに支えられているのか」を感じることも一つの入口になるのです。

スマホを見続けないことも、電車での立派なリラックス方法
電車では、スマートフォンを完全にやめなくても、「1分だけ画面を見ない時間」を挟むだけで刺激を休ませる区切りをつくれます。
「通勤中くらい好きな動画を見たい」
そう思う日もありますよね。
もちろん、動画や音楽、ゲーム、読書が気分転換になることもあります。
好きな音楽を聴いて気持ちが切り替わる人もいれば、好きな作品を読むことで仕事のことから離れられる人もいます。
ですから、スマートフォンを使うこと自体を悪者にする必要はありません。
一方で、動画やSNS、ゲームなどを途切れなく見続けると、「休憩していたつもりなのに、なんだか頭が疲れた」と感じる方もいるでしょう。
朝から仕事でパソコンを見る。
昼休みにスマートフォンを見る。
帰りの電車でも画面を見る。
家に着いてからも動画を見る。
こうした一日が続けば、体は座っていても、目や頭には近距離の情報が長く入り続けます。
デジタル画面を長時間見ることは、目の疲れや不快感などにつながる「デジタル眼精疲労」と関連することが知られています。
だからといって、「通勤中はスマホ禁止」と決める必要はありません。
そこでおすすめしたいのが、1分だけ情報を入れない時間です。
長くなくて構いません。
スマートフォンをバッグやポケットに入れる。
イヤホンを外す、あるいは音を止める。
目は安全を確認できる程度に開けたまま、窓の外や床の少し先を見る。
そして、自分の吐く息や足裏、背中に注意を向けます。
私は、この1分を「頭から体へ帰る時間」と考えています。
リラックスするために、必ずしも楽しい情報を入れる必要はないのです。
私たちは日常生活の中で、「暇な時間=何かを見る時間」に慣れているのかもしれません。
電車がホームへ入ってくる数十秒。
信号が変わるまでの時間。
エレベーターを待つ時間。
少しでも空白があると、無意識にスマートフォンへ手が伸びることがありますよね。
でも、何も見ない時間は「無駄な空白」ではありません。
情報を入れず、ただ立っている。
息をしている。
周囲の音を聞いている。
そういう時間をあえて残すことも、頭を働かせ続けないための選択肢になります。
もちろん、スマートフォンを見ること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、刺激を受け続ける時間と、少し刺激から離れる時間の両方を自分で選べることです。
「スマホをやめる」ではなく、情報の切れ目をつくる
ここで私が特に大切だと思うのは、0か100かで考えないことです。
「スマホを見たら休めない」「SNSをやめなくてはいけない」と考えると、それもまた負担になります。
動画を10分楽しんだら、次の駅まで画面を閉じる。
SNSを見たあと、30秒だけ窓の外を見る。
イヤホンで音楽を聴いたあと、1曲分だけ無音にする。
このように刺激の途中へ小さな切れ目を入れるだけでもよいのです。
「何を見るか」だけでなく、「何も見ない時間をいつ入れるか」。
この視点を持っておくと、移動時間の休み方を自分で調整しやすくなるでしょう。
外出中のリラックスは「1分で整えよう」としなくていい
外出中のセルフケアは全部やる必要はありません。その日の自分に合うものを、ひとつだけ選べば十分です。
ここまで読むと、「呼吸も姿勢も足裏も意識しなければ」と感じる方がいるかもしれません。
でも、それではセルフケアが新しい宿題になってしまいますね。
外出中に取り入れるなら、次の中からその日ひとつだけ選ぶくらいで十分です。
- スマートフォンを1分だけ閉じる
- 吐く息を静かに感じる
- 肩や奥歯の力みに気づく
- 足裏が床に触れている感覚を感じる
- 電車の中では呼吸を1〜10まで数える
- 歩いているときは数歩だけ足の感覚を追う
- 駅を出たら10秒ほど遠くの景色や空を見る
すべて実践する必要はありません。
むしろ、その日の自分に合うものを選べることのほうが大切です。
「今日は呼吸に集中すると苦しく感じる」という日なら、足裏だけ感じてもいいでしょう。
「人が多すぎて体の感覚に集中できない」という日は、窓の外を見るだけでも構いません。
「目を閉じると不安になる」という方は、当然、目を閉じる必要はありません。
「今日はもう何もしたくない」という日なら、それも自分の状態を知る大切なサインです。
心や体が疲れている日にまで、上手にリラックスすることを求めなくてもいいのです。
「集中できた」「長く瞑想できた」と自分に点数をつけないことも、リラックスを続けるコツです。
リラックス法に点数をつけ始めると、「今日もうまくできなかった」という新しいストレスが生まれてしまうからです。
セルフケアは、試験ではありません。
できたか、できなかったかではなく、今日の自分がどんな状態なのかに気づくためのものとして使ってみてください。
「今日は肩がずいぶん硬いな」
「朝から息が浅い気がするな」
「人混みの音がいつもよりつらいな」
「スマホを見ることにも疲れているな」
そこまで分かれば、それだけでも意味があります。
自分の状態が分かれば、「今日は早く休もう」「帰宅したら静かな時間をつくろう」「次の電車では座れるルートを選ぼう」と、その先の選択につなげられるからです。
考察|移動時間を「消耗する時間」から「戻ってくる時間」へ
外出中や電車でのリラックスするためには、「呼吸」「姿勢」「注意の向け先」といった日常の中で扱える要素がセルフケアとして有用です。
これは、とても大切なポイントだと私は考えています。
なぜなら、通勤や外出は多くの人にとって繰り返される時間だからです。
たとえば、月に一度だけ特別な場所で数時間休む方法も素敵です。
温泉へ行ったり、自然の中で過ごしたり、自分の好きな場所へ出かけたりする時間には、日常から離れる良さがあります。
けれど、それとは別に、毎日の移動時間のうち1分でも心身を休める時間がつくれたら、その積み重ねにはまた違った意味があります。
私自身、心と体のケアについて考えるとき、「何を足すか」よりも「体がすでにしていることへ気づく」という視点を大切にしています。
呼吸は、すでにしています。
足は、すでに地面を支えています。
背骨は、すでに頭や体を支えています。
目は、すでに景色を見ています。
座席や床、つり革も、すでに私たちの体を支えてくれています。
私たちは、それらを新しく身につけなくてもいいのです。
ただ一瞬、「今ここに体がある」と思い出すだけでいい。
これが、外出中のリラックスを続けるうえでの大きな強みではないでしょうか。
リラックスは「心を無理に静かにすること」ではない
もう一つ、私が伝えておきたいことがあります。
リラックスという言葉を聞くと、「不安を消さなければ」「無心にならなければ」「穏やかな気持ちにならなければ」と考えてしまう方がいます。
けれど、私は不安が残ったままでも、体の力を1割だけゆるめられれば、それも十分なセルフケアだと思っています。
明日の仕事が心配なままでもいい。
人混みが苦手なままでもいい。
「早く家に帰りたい」と思っていてもいい。
それでも、肩が上がっていることに気づいて、少し下げる。
足裏を感じる。
スマートフォンを一度閉じる。
それだけなら、不安と戦う必要がありません。
個人的には、この「気分を変えること」と「自分を少し楽にすること」を分けて考える視点が、外出中のセルフケアではとても重要だと感じています。
気分が完全に晴れなくても、体への負担を少し減らすことはできます。
「移動時間も有効活用しなければ」と思わなくていい
一方で、「通勤時間を自己投資の時間に変えよう」という考え方については、少し距離を置いて考えることも必要だと思っています。
もちろん、語学学習や読書、オーディオブックを楽しめる人にとっては、とても充実した時間になるでしょう。
元気な日は、そうした過ごし方も素敵です。
しかし、すでに仕事や家事、人間関係で頭がいっぱいの人まで、「移動中も有効活用しなければ」と考える必要はありません。
移動時間くらい、何も生み出さなくてもいいのです。
本を読まなくてもいい。
勉強しなくてもいい。
仕事の連絡を処理しなくてもいい。
有意義なことを一つもしていない数分間があっても構いません。
個人的には、外出中のリラックスで大切なのは「移動時間を価値ある時間に変えること」ではなく、移動している間にも、自分を置き去りにしないことだと考えています。
朝の電車で不安を感じていたら、「不安にならないようにしよう」と押さえ込むのではなく、「今日は少し緊張しているんだな」と気づく。
人混みで肩に力が入っていたら、「力を抜け」と命令するのではなく、「ずっと頑張って支えていたんだな」と気づく。
そこから一度、息を吐く。
私はそのくらいのやさしい距離感が、毎日のセルフケアにはちょうどよいと思います。
リラックスできない環境なら「環境を変える」ことも選択肢
そして、セルフケアを考えるうえで見落としたくないのが、自分自身だけを変えようとしすぎないことです。
電車で強い不安や動悸、息苦しさが繰り返し起こり、乗車そのものを避けるようになっている場合は、リラックス法だけで抱え込まないことも大切です。
強い不安に加えて動悸、息苦しさ、めまいなどが急に現れることはあり、不安によって日常生活や行動に影響が出る場合には、専門家へ相談する選択肢もあります。こころの情報サイト+1
満員電車そのものが強い負担になっているなら、可能な範囲で次のような環境調整も考えられます。
時差出勤を利用する。
一本早い、あるいは遅い電車に変える。
比較的混雑の少ない車両を探す。
乗り換えが少ない経路を試す。
勤務形態について相談できる環境なら相談する。
途中で一度降りられるという選択肢を持っておく。
こうした工夫も立派なセルフケアです。
「どんな環境でも自分の心をコントロールできるようになること」だけが正解ではありません。
自分を苦しめている環境そのものを少し変えられないか考える視点も、同じくらい大切なのです。
自分の心を強くすることだけではなく、自分が少し楽でいられる条件を探すこと。
私は、こちらも忘れないでいてほしいと思います。
まとめ|外でも電車でも、リラックスは小さく始められる
外出中や電車の中でリラックスする方法は、特別な道具や長い時間を必要とするものばかりではありません。
呼吸を数える、吐く息に気づく、肩や奥歯の力を少し抜く、足裏を感じる、スマートフォンを1分閉じる、遠くの景色を見る。
そんな小さな工夫でも、頭の中へ集まり続けていた注意を、今ここにある体へ戻すきっかけになります。
大切なのは、すべてを実践することではありません。
どれかひとつ、自分に合うものが見つかれば十分です。
そして、リラックスできなかった日があっても、自分を責めなくて大丈夫です。
「今日は疲れているんだな」と分かったことも、自分の状態に気づけたという意味では大切な一歩です。
今日の帰り道、電車に乗ったらスマートフォンを見る前に、一度だけ肩の力を確認してみてはいかがでしょうか。
そして、苦しくない範囲で静かにひと息吐いてみる。
外にいても、電車の中でも、ほんの短い時間なら「自分のところへ戻ってくる場所」はつくれます。
よくある質問
電車で簡単にリラックスする方法はありますか?
はい。つり革や手すりなどで安全を確保したうえで、「吐いて吸って」を1回として10まで数える方法があります。
途中で別のことを考えても問題ありません。気づいたときに、また呼吸へ意識を戻しましょう。
また、スマートフォンを1分だけ閉じて、足裏や背中、肩の感覚を感じる方法も手軽です。
数えることが負担になる方は、呼吸を数えなくても構いません。「息を吐いているな」と気づくだけでも十分です。
満員電車で呼吸が浅く感じるときはどうすればいいですか?
無理に大きく吸おうとせず、まず肩やあご、奥歯、お腹などの力みに気づいてみてください。
そのうえで、苦しくない範囲で静かに息を吐きます。呼吸を完璧に整えようとしなくても大丈夫です。
厚生労働省のセルフケア情報でも、呼吸法ではゆっくり息を吐くところから始める方法が紹介されています。
ただし、強い息苦しさや胸痛、めまい、失神しそうな感覚などがある場合は、単なるストレスと決めつけないでください。
安全な場所へ移動し、症状に応じて周囲へ助けを求めたり、医療機関へ相談したりすることを優先しましょう。
外出中にリラックスできない日はどうすればいいですか?
無理にリラックスしようとしなくても構いません。
「今日は人混みがつらい」「ずいぶん肩に力が入っている」と気づくだけでも、自分の状態を知る一歩になります。
呼吸が合わない日は景色を見る、体の感覚に集中しづらい日はスマートフォンを閉じるだけにするなど、その日の自分に合わせて方法を変えてみてくださいね。
それでも外出や電車への強い不安が続き、生活や仕事に影響している場合は、一人でセルフケアだけを続けるのではなく、医療機関などへ相談することも選択肢です。
リラックスは「うまくできるようになる課題」ではありません。
今日の自分を少しだけ楽にするために、使える方法をひとつ選ぶ。それくらいの気持ちで付き合っていくのが、長く続けるためにはちょうどよいでしょう。


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