マインドフルネスは、座って瞑想するときだけのものではありません。飲む・歩く・食べるといった日常の動作に意識を向けることでも実践できます。
忙しくて瞑想の時間を作れない人でも大丈夫です。大切なのは特別な時間を増やすことではなく、いつもの生活の中で「今、この瞬間」に注意を戻していくことなのですね。
マインドフルネスは瞑想以外でもできる?
結論からいうと、マインドフルネスは瞑想以外でも実践できます。「マインドフルネス=静かな場所で目を閉じて瞑想すること」と思われがちですが、瞑想は実践方法のひとつです。
瞑想以外の日常的な方法として「香り」「動き」「食べること」に意識を向ける方法もあります。
実際に、仕事や日常生活にマインドフルネスを取り入れる学習コンテンツでも、食事をじっくり味わう「マインドフル・イーティング」、ゆっくり歩く「マインドフル・ウォーキング」、相手の話に注意を向ける「マインドフル・リスニング」などが存在してます。
共通しているのは、その瞬間にしていることへ意識を向ける「シングルタスク」という考え方です。
たとえば、食事をしながらスマートフォンを見るのではなく、「今は食べることだけ」に注意を向けます。歩くときにはスマートフォンを操作せず、足の裏や体の動き、周囲の音などを感じます。
つまり、特別な道具や長い時間がなくても、朝起きてから夜眠るまでの生活そのものをマインドフルネスの時間に変えられるのです。
私は、この「生活を増やすのではなく、今していることの質を変える」という点が、忙しい人にとってとても大切だと考えています。
疲れているときほど、新しい健康習慣を追加すること自体が負担になってしまうものです。すでに毎日している「飲む・歩く・食べる」を使えるなら、始めるハードルはぐっと下がりますね。
そもそもマインドフルネスとは?
マインドフルネスでは、今この瞬間に起きている感覚や経験へ注意を向けていきます。
私たちはコーヒーを飲みながら仕事のことを考えたり、歩きながらスマートフォンを見たり、食事をしながら動画を眺めたりしがちです。
体は目の前の行動をしていても、頭の中では昨日の失敗や明日の予定を考えていることもありますよね。
マインドフルネスでは、そんな状態から「今ここ」に注意を戻します。
難しく考える必要はありません。
「お茶が温かいな」
「足の裏に地面の硬さを感じるな」
「この食べ物は最初に甘さを感じるな」
そんな小さな気づきも、今この瞬間へ注意を向ける入口になります。
マインドフルネスを瞑想以外で取り入れる3つの方法
瞑想以外でマインドフルネスを始めるなら、「香り」「動き」「食べること」の3つは日常生活に取り入れやすい方法です。
特別な準備をするより、「いつもの行動を少し丁寧にしてみる」と考えてみてください。
- 飲むとき:香り・味・温度・喉を通る感覚に注意する
- 歩くとき:足の着地・重心移動・地面の感触などに注意する
- 食べるとき:味・香り・噛む感覚・食感の変化などに注意する
最初からすべてを実践する必要はありません。自分が「これならできそう」と感じるものをひとつ選ぶだけで十分です。
1.飲み物の香りや温度を意識する
もっとも手軽に始めやすいのが、飲み物を使った方法です。
朝にお茶を飲むときや、仕事の休憩時間にコーヒーを飲むときを利用できます。
いつものようにすぐ口へ運ぶのではなく、まず香りに注意を向けてみましょう。
どんな香りでしょうか。香ばしいでしょうか。それとも、ほのかに甘さを感じるでしょうか。
口に含んだら、今度は温度や味に注意します。
温かさが口から喉へ移っていく感覚や、飲み込んだ後に残る香りなどを、評価しようとせずに感じてみます。
ここで重要なのが、スマートフォンや仕事からいったん離れて「飲むことだけ」に意識を向けることです。
パソコンでメールを確認しながらコーヒーを飲んでしまうと、注意は画面と飲み物の間を行き来します。
ほんの1分だけでも構いません。
「今は、この一杯を飲む時間」と決めてみると、普段は気づかなかった香りや温度が感じられるかもしれませんね。
私は、マインドフルネスを初めて試す人には、この方法が特に取り入れやすいと感じます。
なぜなら、「マインドフルネスをする時間」を新しく確保しなくても、毎日の休憩をそのまま利用できるからです。
2.歩きながら体の動きを感じる
歩くことに注意を向ける「マインドフル・ウォーキング」も、瞑想以外でできる代表的な方法です。
普段は目的地へ到着することばかり考えてしまいますが、少しだけ「歩いている自分の体」へ注意を向けてみましょう。
足が地面に着く。
かかとから足裏へ重さが移る。
体の重心が前へ進む。
反対側の足が地面から離れる。
いつも無意識に繰り返している動きを、ひとつずつ観察するような感覚です。
慣れてきたら、地面の硬さ、腰や腕の動き、靴の中で足にかかっている圧力などにも注意を広げてみます。
通勤や散歩など、すでに歩いている時間を使えるのがメリットですね。
ただし、安全が最優先です。道路を横断するときや人通りの多い場所では、周囲の状況を十分に確認してください。
マインドフルネスは周囲への注意をなくすことではありません。安全に必要な注意を保ちながら、今の感覚に気づいていくことが大切です。
電車で移動しているときなら、座席に触れている体の感覚や車両の揺れ、周囲から聞こえてくる音などを観察する方法もあります。
「今、肩に少し力が入っているな」と気づくことがあるかもしれません。
このように自分の体を観察すると、普段どれほど無意識に力んでいるのかに気づくきっかけにもなります。
3.食事を一口ずつ味わう
毎日の食事も、そのままマインドフルネスの実践時間になります。
いわゆる「マインドフル・イーティング」です。
難しいことをする必要はありません。まず一口だけ、いつもより丁寧に食べてみましょう。
食べ物を口へ入れた瞬間の味、噛んだときの音、舌触り、香りなどに注意を向けます。
噛んでいるうちに、最初は固かった食材が少しずつ細かくなり、食感が変化していくでしょう。
舌や喉がどのように動いているのかを感じてみるのもひとつです。
食べ物の味は、口へ入れた瞬間から飲み込むまでずっと同じとは限りません。
「最初に感じた味」と「噛んだ後に感じる味」の違いに気づくこともあります。
普段の食事では、テレビやスマートフォンを見ながら食べてしまう人も多いでしょう。
しかし、マインドフルネスとして行う時間だけは、できる範囲で食事そのものに注意を向けてみます。
また、よく噛むことでダイエット効果も期待できます。
ただし、マインドフル・イーティングを「痩せる方法」として捉えるのではなく、食べている瞬間へ丁寧に注意を向ける方法として考えることが大切です。
瞑想以外なら「シングルタスク」がポイント
瞑想以外でマインドフルネスを実践するとき、覚えておきたいキーワードがシングルタスクです。
ひとつの時間に、ひとつのことへ注意を向けます。
たとえば、
「歩きながらSNSを見る」
「食べながら動画を見る」
「コーヒーを飲みながらメールを書く」
こうした行動では、注意が複数の対象へ移りやすくなります。
反対にマインドフルネスでは、「今は歩く」「今は食べる」「今は飲む」と、目の前の行動を丁寧に感じていきます。
ただし、ここでひとつ誤解してほしくないことがあります。
集中が途切れたからといって、失敗ではありません。
たとえばコーヒーの香りに注意を向けていても、
「そういえば、あのメールを返信しなくちゃ」
「夕飯は何にしよう」
と別の考えが浮かんでくることがあります。
それは珍しいことではありません。
大切なのは「考えちゃダメ」と追い払うことではなく、「別のことを考えていたな」と気づいて、もう一度コーヒーの香りへ注意を戻すことです。
この「気づく→戻る」までをひとまとまりとして考えると、マインドフルネスはずっと気楽になります。
私はここが、続けるうえで特に重要なポイントだと考えています。
「何も考えない状態にならなければいけない」と思ってしまうと、雑念が出るたびに自分を採点することになるからです。
心を休ませるための時間なのに、「また集中できなかった」と自分を責めてしまっては苦しくなってしまいますよね。
注意がそれたことに気づけたら、それもひとつの「気づき」です。静かに目の前の感覚へ戻れば、それで十分でしょう。

マインドフルネスで「脳を休ませる」はどう考えればいい?
マインドフルネスは「脳の休息」にもなり、集中力やメンタルケアと深く関係します。
また、人間の脳は絶えず活動しており、疲れた脳へ休息を与えるという考え方から、日常的なマインドフルネスはとても大切です。
ただし、「マインドフルネスをすれば脳が完全に活動を停止して休む」という意味ではありません。
むしろ日常生活では、過去のことを考えたり、先の予定を心配したり、複数の情報を追いかけたりと、注意がさまざまな方向へ飛び続けることがあります。
そこで目の前のひとつの感覚へ注意を戻していく。
その時間を、日常の情報や考え事から距離を置く機会として活用する、と捉えると分かりやすいでしょう。
マインドフルネスについては世界各地で研究されていますが、効果の大きさや現れ方には個人差があります。
「マインドフルネスをすれば集中力が必ず上がる」「いつでも冷静に判断できるようになる」「生活習慣病が改善する」といった形で、すべての人への効果を断定するのは適切ではありません。
健康法は、強い言葉ほど魅力的に見えてしまいます。
けれど私は、心や体に関する情報だからこそ、「期待できる可能性」と「誰にでも同じ結果が出ること」を分けて考えることが大切だと思っています。
マインドフルネスも万能な方法としてではなく、日常生活の中で自分の注意を目の前へ戻すための選択肢のひとつとして取り入れるのがよいでしょう。
瞑想以外のマインドフルネスを無理なく続けるには?
続けるコツは、頑張って長時間行うことではありません。
ランチタイムや午後のティータイムなどに「1分でも良いので」こまめに取り入れることが大切です。
私は、この「1分」という短さに大きな意味があると感じます。
心身が疲れている人に「毎日30分、新しい習慣を続けましょう」と言っても、それ自体が新しい宿題になってしまうことがあるからです。
そこで、生活の中にある行動と結びつけます。
朝のお茶を飲む最初の1分だけ、香りを感じる。
昼食の最初の一口だけ、スマートフォンを置いて味わう。
駅まで歩く途中の短い時間だけ、足裏の感覚を観察する。
これなら「マインドフルネスのための時間」を別に作らなくても始められます。
さらに続けやすくするなら、時間ではなく行動を合図にする方法がおすすめです。
「夜8時にマインドフルネスをする」と決めると、その時間に仕事や家事が入っただけで崩れてしまいます。
一方、
「朝のお茶を入れたら香りを感じる」
「昼食の最初の一口をゆっくり味わう」
「帰宅途中に少しだけ足裏を感じる」
というように、すでに毎日している行動と組み合わせれば、思い出しやすくなります。
ここは、瞑想以外のマインドフルネスだからこそ活かせる特徴ではないでしょうか。
「新しい習慣を足す」のではなく、「今ある習慣に意識を足す」のです。
人の話を「聞くこと」もマインドフルネスになる
さらに日常生活へ広げるなら、「マインドフル・リスニング」という考え方もあります。
相手が話している最中に、
「次は自分が何を言おう」
「それは違うと思う」
と頭の中で返答を組み立てるのではなく、まず相手の話そのものに注意を向けます。
声の調子や言葉、間などを含めて、「今、相手が話していること」を聞いてみるのです。
これは食べる、歩く、飲むという身体感覚中心の方法とは少し性質が異なりますが、「今していることへ注意を向ける」という点では共通しています。
特に興味深いのは、マインドフルネスが一人きりの時間だけに限定されないところです。
朝の飲み物、通勤、食事、人との会話。
そう考えると、生活のかなり多くの場面を練習の機会にできますね。
ただし、家族や仕事仲間との会話を「マインドフルネスの訓練」として分析しすぎる必要はありません。
まずはスマートフォンから目を離して、相手の話を最後まで聞く。
そのくらい自然な形から始めるほうが、日常にはなじみやすいでしょう。
瞑想以外のマインドフルネスについて私が考えること
ここからは、心と体のケアに関わってきた立場からの私見です。
マインドフルネスについて調べると、「脳を休ませる」「集中力を高める」「ストレスを軽くする」など、さまざまなメリットを表す言葉が見つかります。
もちろん研究されている分野ではありますが、私は効果を追いかけすぎないことも大切だと考えています。
「集中力を上げなければ」
「ストレスをなくさなければ」
「毎日続けなければ」
そんな気持ちで取り組むと、心を整えるはずの時間が、いつの間にか自分を評価する時間になってしまうからです。
マインドフルネスを始めた日に、何か劇的な変化を感じなくても問題ありません。
コーヒーを飲んだときに、「今日は少し苦く感じる」と気づいた。
歩いているときに、「思っていた以上に肩へ力が入っていた」と気づいた。
食事をしていて、「動画を見ていると、ほとんど味を意識していなかった」と気づいた。
私は、こうした小さな発見そのものに意味があると思います。
そしてもうひとつ大切なのは、マインドフルネスを「何も考えない技術」にしないことです。
考えが浮かんだら失敗、雑念が出たら失敗、と考える必要はありません。
別の考えに意識が移ったことに気づき、また目の前へ戻る。
その繰り返しで構いません。
さらに、マインドフルネスを休息の「代わり」にしてしまわないことも重要でしょう。
疲れているのに睡眠時間を削り、「マインドフルネスをしているから大丈夫」と考えるものではありません。
十分な睡眠や休憩、食事などの基本的な生活は、やはり大切です。
また、心身の不調が長く続いている場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合には、セルフケアだけですべてを解決しようと抱え込まず、必要に応じて医療機関など専門家への相談も選択肢になります。
マインドフルネスは、誰かに評価してもらう競技ではありません。
できる日があって、できない日があってもいい。
忙しい朝なら、お茶の香りを一度感じるだけでもいいでしょう。
余裕のある休日なら、少し長めに散歩しながら足の動きや風を感じてみてもいいですね。
日常での実践に慣れてきて、「もう少しじっくり取り組んでみたい」と思ったときに、朝や夜のマインドフルネス瞑想へ広げていく方法もあります。
瞑想ができないからマインドフルネスができないのではありません。
むしろ、いつもの生活の中に入口がいくつもある。
この気軽さこそ、瞑想以外でマインドフルネスを取り入れる大きな魅力ではないでしょうか。
まとめ|マインドフルネスは瞑想以外の日常動作でもできる
マインドフルネスは、静かな場所に座って行う瞑想だけではありません。
飲み物の香りや温度を感じる、歩いているときの足裏や重心の変化を観察する、食事を一口ずつ味わう、人の話へ注意を向けるなど、普段の生活の中でも実践できます。
ポイントは、何か特別なことを増やすのではなく、今していることへ意識を戻すことです。
途中で仕事や予定について考えてしまっても、それを失敗だと思う必要はありません。「意識がそれた」と気づいたら、もう一度、香りや味、体の感覚などへ戻ってみましょう。
最初から長時間続ける必要もありません。
朝のお茶、昼食の一口、通勤途中の短い散歩など、自分が続けやすい場面から始めるほうが生活になじみやすいでしょう。
忙しい毎日の中では、「自分を休ませるために、さらに頑張る」という矛盾に陥ってしまうことがあります。
だからこそ、今ある生活に新しい予定を足すのではなく、今ある一瞬を少し丁寧に感じてみる。
そんな小さなマインドフルネスから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
マインドフルネスは瞑想しなくてもできますか?
はい。飲み物の香りや温度を感じる、歩いているときの体の動きを観察する、食事を丁寧に味わうなど、瞑想以外でも実践できます。
大切なのは方法の形ではなく、「今この瞬間にしていること」へ注意を向けることです。
瞑想以外のマインドフルネスは何分くらいやればいいですか?
最初から長時間行う必要はありません。元となった情報では、ランチタイムや午後のティータイムなどに1分程度から取り入れる方法が示されています。
時間の長さを達成目標にするより、無理なく生活に組み込めることを大切にしてみてください。
マインドフルネス中に別のことを考えたら失敗ですか?
失敗ではありません。
別の考えが浮かんだことに気づいたら、自分を責めずに、飲み物の香りや足裏の感覚、食べ物の味など、そのとき意識していた対象へ静かに注意を戻してみましょう。
結城紬(心と体のケアアドバイザー)


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